さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「彼女じゃないよ」

 彼は慌てて否定した。

「何意識しているのよ。彼女は恋人じゃなくて、代名詞の彼女でしょう? sheの彼女よ」

「そういうことね。それって屁理屈だろう?」

 尚志さんは苦笑いを浮かべていた。

「まあいいじゃない。彼女、映画に出るって」

「らしいね。千春に聞いた?」

 その女性は頷く。

 その話で二人が話をしているのはあたしのことだと分かった。

 自分のことを話していると分かっていて、盗み聞きをするのは好きではなかった。

 だから、あたしがその場から離れようとしたときだった。

「彼女のことが好きなの?」

「まさか」

 尚志さんは答えを準備していたかのように即答した。
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