さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「それなら俺の服か。千春が戻ってくるまでだから我慢してくれ」

 その言葉に胸が高鳴る。

 嫌なんてことはもちろんない。

「そのままじゃあれだから、シャワーでも浴びてきたら? 勝手に使っていいから」

 彼はバスと思われる方向を指差す。しかし、そうですかと歩けるほど、無神経な人間でもない。

「本当、世話が焼けるよな」

 彼はあたしの心境に気づいたのか、靴を脱ぐように促した。

 あたしはサンダルを脱ぐと、床を足に乗せようとして、足が濡れているのに気づいた。

「そのままでもいいし、気になるならそのタオルで拭くといいよ」

 あたしは足を拭くと、そのまま洗面所に連れて行かれた。

 彼は戸棚からタオルとバスタオルを出すと、あたしの腕に押しつける。

「洋服どうする? 洗ってもいいけど」

 彼は洗濯機を指差した。その隣には乾燥機のようなものまである。

「大丈夫」
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