さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「でも、尚志さんは関係していないでしょう? そんな勝手なこと」

「それを書くのが仕事の人もいるんだよ」

 あたしは唇を噛み締める。

「母親が止めた理由もそうだったから」

 彼はあたしの耳元で囁く。

 あたしは彼を見た。

「父親とつきあう前に、そう書かれたから止めたんだよ。逃げるように、ね。

母親のときはまだ伯父に力があった。だから、ある程度は庇うこともできたし、そこまでひどい中傷もなかった」

 彼はそこで息を吐く。

「でも、手段のためなら、平気で人を傷つける人間もいる。人の苦しみや悲しみを理解できないやつらも多い。

そんなやつらが君を標的にしないとも限らない。人の目に触れるというのはそういうことだから。

伯父は君を庇いたいと思うだろう。でも、今の彼の力では到底無理だから。もし庇えたとしても、下手に庇うと君の母親まで巻き込むことになってしまう。だから、伯父は君を庇えない。

君を庇うことで、君自身も必要以上に傷つけてしまうことになるから。君は自分で自分を守るしかないんだよ」

 彼の口ぶりから父親のことを知っているような気がしたのだ。

「あたしの父親のこと知っていたの?」

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