さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「でも、それだけじゃない。子供は別に作らなくても、君と一緒に過ごせたらどんなに幸せだろうとも思う。たとえ、プライバシーがなくても。

でも、君が母のようになってしまうかと考えたら怖いんだよ」

「同じことを?」

「君は他人をきちんと認めることができる。だからそんなことはしないと思う。でも」

 尚志さんは顎に手を当てる。

「千春を巻き込んだことだよ。多分、母親は中傷以外にも、自分に限界を感じていたんだと思う。

過去の自分の演技と比べられることに、何らかの弱味を見せることに対して臆病になっていたのかもしれない」

 あたしは尚志さんから目を離すことができなかった。

「でも、人から注目を浴びることが忘れられなくて、千春を巻き込んだ。才能があるのだから、女優になるべきだ、と。

そういったことで、受け付けないってこともあるから。もちろん、君が同じことをするとは思えないけど、君が変わっていくのを見ていたくはないから」

 彼の声が震える。

 その声が彼の迷いをあらわしているような気がした。

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