さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「君には黙っていたけど、伯父や木下さんからも君には手を出すなって言われているから。少なくとも撮影が終わるまでは」

「でも、この前」

 彼はあたしにキスをしてきた。

 尚志さんは苦笑いを浮かべる。

「あの後、二人にこってりと絞られたよ。まあ、彼らがどれほどこの映画にかけているか分かるし、仕方ないんだと思う。

とりあえず君には関わらないでほしいと言っていたよ。君はすぐ雰囲気に出るから、ってさ。今日のこともばれたら、問題になりそうな気がするんだけどな」

「そうなの?」

 あたしはそんなに雰囲気が変わるのだろうか。顔に出やすいとは思うけれど。

「だから、隔離状態に君を置いたんじゃない? 顔が笑っていても、君はまれに目に出るから。

あの人たちが神経質なんだとは分かるし、完璧主義者だから手が抜けないんだと思う」
< 491 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop