さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 彼女たちはもう一度頭をさげて去っていく。

 かわいい子たちだった。

 でも、あたしは。

 そう思うと、胸の痛みは増すだけだった。

「気にしなくていいよ」

 そう言ったのは千春だった。

 彼女は寂しそうな笑みを浮かべている。 

「そうだね」

 あたしは彼女の言葉に頷くことしかできなかった。

 尚志さんに出会わなければ、こんな悲しみも虚しさもなかった。

 あたしはすごくひどいことをしているのではないか。

 そんな気持ちがあたしを襲う。

 嘘をついているつもりはない。

 でも、結果的に同じことなのかもしれない。

「恋愛なんて、さ」

 千春は声を絞り出すようにして語りだす。

 あたしが彼女を見ると、彼女は寂しそうに微笑んでいた。
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