さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「ほとんどの人はいつでもできるって言うと思うんだよね。

でも、誰かを本当に好きになったとき、次に誰かのことを愛しく思える保障があるわけじゃない。

永遠に会えないかもしれない。次がないかもしれないって思うの。でも、京香にとっては夢も同じ。

だから、自分で選んだ道をね、選ぶしかないのよ。誰も万が一のとき、あなたと変わってあげられないから。苦しみを共有することはできないから。

分かったつもりしかできないから」

 彼女はまるで物語を聞かせるかのような優しい口調であたしにそう語りかける。

「もちろん、それは時と場合によるよ。あなたはこれ以降の仕事がまだ確実には決まっていない。

決まっているなら、あたしはあなたにこんなことは言えないから。

言い方は悪いけど、今、何か大きなものを背負っているわけじゃない。だから、あなたの望む生き方を選んでほしい」

「どうして、みんなあたしにそんな優しくしてくれるんだろうね」

 両親だけじゃない。千春も、尚志さんも杉田さんも木下さんまでもあたしのことを考えてくれているのが分かる。
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