さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「たいしたことじゃないのよ。体力が落ちているみたい。あなたが傍にいられないなら、わたしたちがそこに行こうとは思うけど」

「そっか。ちょっと待って。また後で電話するから」

 この前帰ったときは気づかなかった。

 彼女はきつくても顔に出さないし、泣き言も言わないから。

 あたしは唇をきゅっと噛み締めた。

 今は夜の十時だ。疲れたので昨夜は九時半には眠ったのだ。

 今から戻れば明日の朝にはこちらに戻ってこれる。

 でも、誰に車を運転してもらおう。

 木下さんに相談するのが一番だろう。

 でもそう思ったとき、思い浮かんだのがあたしの父のことだった。

 多分、彼女がつらいときに一番会いたいのは彼なんだということもなんとなく分かる。



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