さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 それをあたしが彼女に言えば、否定するだろう。

 でも、見ていたら分かるのだ。

 あたしは携帯で電話をする。

「もしもし?」

 受話器から聞こえてきた低い声に安堵する。

「あの、今、部屋ですか?」

「ああ、今から部屋に戻るところだ」

 扉の開く音が聞こえてきた。

 そして、キーっと扉が閉まる音が聞こえた。

「大きな声を出さないでくださいね」

「分かった、分かった」

 軽い口調の声だった。

 多分、たいしたことでもないと思っているのだろう。

「お母さんが倒れたって。でも、体力が落ちているだけでたいしたことはないと言っているけど」

「え?」

 疑問をこめたような声が聞こえてくる。

あたしはそこまで口にして、彼はあたしが自分の娘だと知らないのだと思い出す。
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