さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「あの、あたし知っているんです。本当の父親のことを」

「分かった。今すぐ行こう」

 彼はあたしの声に被せるように強い言葉を発してきた。

 彼のさっきの驚きの声はあたしのことではなくて、母のことを聞いて出した声だったのだと気づく。

 あたしたちはそれから三十分後に家の前で落ち合うことに決めた。

 今日はここには他にもスタッフが泊まっている人がいる。

 目立つ行動は避けたかったが仕方ないのかもしれない。

 あたしは木下さんの部屋をノックした。

 すぐに彼女は出てきた。

「どうかした?」

「中でいいですか?」

 あたしは彼女の部屋の中に入ることになった。
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