さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 三日後、木下さんが戻ってきた。そして、その日の夜、母親から電話がかかってきた。

 携帯にかけているので、あまり長電話はできない。だから、その電話はあまりに淡白なものだった。

 彼女は来年の春には仕事を辞めて、実家に帰ることに決めたようだった。

 その言葉だけだと彼の話を受け入れたかは分からない。

 でも、多分受け入れたのだろう。

 あたしはそう思ってた。

 母のあのときの嬉しそうな顔を思い出すと、そう思わずにはいられなかったのだ。

 それがずっと彼を思い続けた母の素直な気持ちだったのだろう。

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