さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 女優にずっとなりたかった。

 そして、なることができた。

 もしかするとこれからその道を歩んでいくという選択肢もあっただろう。

 夢を選んだ彼のように。

 あたしは拳を自分の胸に当てた。

 でもあたしは違った。

 この短い間に多くのことを知った。

 それはきっとあたしを大きく変えてくれるものだろう。

「さっきのはずっとそう言おうと考えていた答えだけど、本心は違うのかもしれない」

 あたしは彼を見た。

「本当は続けていてほしいという気持ちもある。君は自分を過小評価しているから。

でも、同時に普通の幸せを見つけてほしいという気持ちもなくはない」

 彼はそこで咳払いをする。
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