さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「だから、大学の学費とかできれば面倒を見たいと思っているんだが」

「え?」

 あたしは思いがけない言葉に彼を見た。

「でも、受かるか分からないし」

 とっさに出てきた言葉。

「受かったら払わせてくれるか?」

 本当はここでいらないって言ったほうがかっこいいのかもしれないと思う。

 でも、あたしはそうは言わなかった。

 それはあたし一人で学費をどうするか迷っていたこともあったし、

 もう少しだけ、父親というものに甘えたかったのかもしれない。



 あたしは最後まで彼女を演じ続けた。

 青空が澄み渡る空のしたで、二人は再会した。

 果歩の言葉に彼が振り返った。

 最後のシーンの撮影が終わる。



 撮影が終わったのだ。

 あたしは思わず目を閉じた。

 そして、これであたしの一つの人生が終わりを告げたのだ、と分かった。



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