さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「いくらでも待つよ」

 あたしはその言葉に彼を見た。

 尚志さんは初めて会ったときのような笑顔を浮かべていた。

「傷つけてしまったから。だから、もし、君が今までささえてくれた人たちのことを今、思っていても、忘れるまで待つからさ」

「意外。絶対嫌だと思っていたのに」

「最初で最後だよ。こんなことは」

 彼は苦笑いを浮かべる。

 その手があたしの頬に触れた。

「それでも君が俺を選んでくれたのなら、一緒にいることを望んでくれるなら、待つのも悪くないって思うから」

 あたしの目頭が熱くなるのが分かった。

「でも、あたしと一緒にいたらいろいろ書かれるかもしれないって。そしたら尚志さんも、お母さんも」

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