さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 その話を千春にしたら、彼女はあたし以上にはしゃいでいた。

「お兄ちゃんにしては思い切ったね」

「はいはい」

 尚志さんは千春に対して気まずいのか、顔を背けている。

「でも、お母さんに話をしないと。お父さんはどうなんだろう」

「言わないとまずいよね。やっぱり」

 千春は何だか楽しそうにしている。声まで心なしか弾んでいるような気がした。

「面白がるなよ」

「千春の家はお母さんも厳しそうだけど、特に『お父さん』がね」

 それが彼女が面白がっている理由なのだろうか。

「そんなことないよ。そこまで気にしないんじゃない」

「でも、あれでも昔は怖かったし、特に身内に対しては容赦ないと思うけど」

「頭でも何でも下げるよ。全く」

 尚志さんはため息混じりに呟いた。



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