さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 彼女にはそれなりのコネやツテもあったのだろう。

 どこかで杉田さんを見るたびにあたしが辞めなかったら、あたしもこんなふうにめまぐるしい日々を歩んでいたのだろうか。

 そんな叶わない日々を思い描くこともあった。

 ちょっと実感がわかなかった。


 俳優になりたい彼の夢を叶えてほしいと一番強く願っているのは千春か、彼の妹だろう。

 でも、あたしも彼女たちに劣るかもしれないけど、彼の夢を叶えてほしいと思っていた。

 だから、彼の邪魔になるようなことだけは絶対にしたくなかったのだ。

 彼に会うことはほとんどできないけど、それはそれでいいと思っていた。

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