さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 その年の秋に、あたしは尚志さんと入籍をした。

 映画の公開前に入籍をすませておいたほうがいいのではないかという話になったからだ。

 挙式も挙げない、入籍だけだった。

 でも、派手なことが好きでもないあたしたちにはある意味ぴったりなような気がしないでもない。






 テレビ局がバックアップしているわけでもなく、派手な宣伝効果があるわけでもない。

 世間の人の大きな関心を引かない程度には興行成績を伸ばしているようだった。

 その客のほとんどが脚本家のファンか、水絵さんのファンだった人か、杉田さんのファンのどれかだろう。

 一度、その映画についての特集記事を見たことがある。

 父親の方針が通ったのか、世間の人の関心の高さを合わせているのか分からないが、

 その特集は杉田さんと十年ぶりに新作を発表した元売れっ子作家について触れているものだった。
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