さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしはそう疑問に思いつつもそれ以上聞くことができなかった。

「まあ、そんな父親でも感謝はしているわ。父親がお金を残してくれたわけだから、あたしも兄も学校に通うことができるけど、そうじゃなかったら困るわよね」

「確かにね」

 少なくともこんな家には住むことができなかったのかもしれない。

 彼女はゆっくりと息を吐く。

 息を吐き終わると、口を開いた。

「飲み物飲む? 忘れていたわ」

 彼女は急に立ち上がった。

「いいよ」

「飲み物を飲まないとお肌に悪いでしょう? アルバムとか適当に見ていていいからね」
< 62 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop