さよなら、もう一人のわたし （修正前）

　彼は部屋の中に入ってくると、あたしからアルバムを奪い取った。

　あたしは彼の幼い頃の写真を見ていたことを思い出す。

　確かに子供のときの写真は恥ずかしいかもしれない。

「一応、千春に呼ばれて来たんですけど」

「たく、あいつは」

　彼はアルバムを持ったまま出て行こうとした。

　ドアの隙間から茶色のお盆が姿を現す。

「何しているの？」

　千春があたしたちを見て首をかしげる。

　あたしは唖然とドア付近を見て、尚志はものすごい剣幕でアルバムを手に部屋を飛び出そうとしていた。

　考えればどんなシチュエーションか分かりそうな気はする。

　しかし、千春は「こぼれる」と兄を言葉で押しぬけ、部屋の中に入ってきた。そして、お盆を部屋にあるサイドテーブルの上に置く。