さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 そう思うと、あたしは母親にできるだけ苦労をかけさせたくなかった。

 そんなときに見つけたのが女優という夢だった。女優にもなりたかったし、自分でも少しでもお金を稼げたら、母親も楽になるかもしれないからだ。そう思ってきたのだ。

 母親は内心、きちんとした会社に入って就職してくれることを望んでいるだろう。

 分かっているのだ。それでもどこか諦められない気持ちがあった。

 だから大学三年までにどうにかならなかったら、普通の企業に就職しようとも考えていた。

 それがあたしにできる一番の恩返しだと思っていたからだ。

 彼女はゆっくりとあたしが注いだコップの水を飲み干した。

 また、立ち上がろうとする。
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