さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「鍵をかけておかないと安全上問題だからね」

 彼はあたしが何を言いたいか気づいたのだろう。しかし、その答えはワンテンポ遅い気がする。

「千春も用事がなければ来てほしかったかな」

「誰が用事って?」

 尚志さんは不思議そうにあたしを見た。

「千春が」

 あたしの言葉を軽く笑う。

「あいつに用事があるわけないだろう。嫌だから逃げたんだよ」

「伯父さんに会うのがですか?」

「いや、伯父から説得されるのがね」

 彼女が映画の話が自分に来ていたと言っていたのを思い出した。

 だから彼女は嫌がったのかと分かった。

 そのとき、ビルの鍵が開く。あたしたちは中に入る。
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