さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは尚志さんと一緒に奥の部屋に行く。ドアを開けると、そこには体つきのがっしりとした長身の男性が立っていた。彼は前方を見据えている。

 彼の瞳があたしを見る。

「君が平井京香さんか」

 彼の瞳孔の開いた目があたしの姿をとらえる。

 その目で姿をとらえられるとまるで言葉を忘れてしまったかのように言葉が出てこなかった。

「伯父さん、彼女怖がっているみたいですけど」

 尚志さんが困ったような声を出した。

 彼が我に返ったように目を見開く。

 そして、目を細めた。

 彼の獲物を捕らえるような瞳が優しくなった。

「悪い、悪い。ちょっと目つきが悪くてね」

 さっきの人と同一人物とは思えないほど優しい瞳をしていた。

 あたしはなんとなく胸を撫で下ろす。

「ちょっと二人で話をさせてもらっていいか?」
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