さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「いいですよ」

 尚志さんは笑顔で答える。

 あたしは思わず尚志さんの手をつかんだ。

「どうかした?」

 彼はあたしの動作に驚いたのだろう。目を見開いてあたしを見る。

「何でもないです」

「伯父さんは変な人だけど危険な人ではないから安心するといい」

 尚志さんはあたしの頭を撫でた。何気なく、人の気持ちをなだめるときにする仕草なのだろうか。あたしは彼を見ながらそう思っていた。

「変人は余計だよ」

「本当のことだから」

 尚志はにやっと笑うとそのまま部屋を出て行く。

「そこに座って」

 彼は顎で彼の向い側のソファに座るように促した。

 あたしは彼の正面の席に座る。

「君はどうして女優になりたい?」

 その伯父さんはあたしを一瞥して穏やかな口調で尋ねてきた。
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