皮肉と剣と、そして俺Ⅱ
序章~始動した日々~
太陽が柔らかな朱に染まる夕刻。
二人の男女の影が、部屋に黒い模様を映し出していた。
「付き合ってほしい」
「……は?」
言いにくそうに肩をすくめ、照れたように笑う女。
対照的に、至極真面目な顔であっけらかんとして答える男。
「いや、だからその。
付き合って欲しい場所がある、のだ」
「ああ。そういう意味」
一歩間違えれば、違う意味に捉えられる台詞を言う女。
おまけに頬をうっすらと染めて言うものだから、勘違いもしたくなる。
一一そう。
珍しく言葉を濁すのは、若くして軍の中佐に登りつめた女、エイダ=ヴァネッサ。
そして、その言葉を未だにぽかんとして聞いているのは、何故だか異世界に来てしまった男、久瀬ナオトである。