皮肉と剣と、そして俺Ⅱ



父は母が亡くなる数日前から、隣国の王の元に旅立っていた。

ここ何年か不仲で均衡のとれていなかった両国を条約によって取り持つ目的であった。

けれど、隣国の王は始め渋っていて条約を受け入れようとしなかった。

そのため数日間の滞在が数十日にも及び、父はそのために奮闘していた。


そんな折に起こった母の死。

当然、戻ってこれる訳がない。
父は真面目な人だ。
与えられた仕事を放って戻ってくるはずがなかった。

エイダとて、そんなこと頭では理解している。

父の将軍という立場からしても、一人の女のために国を捨て置ける状態ではなかった。


なんたって、その父が結んだ条約のおかげで今のこの国の平和があるのだから。



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