皮肉と剣と、そして俺Ⅱ
ダニエルと二人で寒空の下待っていると、どこからか馬の蹄の音が聞こえてきた。
はっとして前を見ると、白の中に黒い点がいくつもある。
最初ぼやけていたそれは、次第に形をはっきりさせていく。
隣国から戻ってきた父とその付き人達だった。
エイダとダニエルの目の前で止まったそれらは弾みをつけて馬から降り、地面に足を着ける。
先程までは心地よかった雪の擦れる音が、今は耳につく。
「お久しぶりです、父さん。身体は如何です?」
「ああ。長旅で少し疲れが残っているが、平気だ」
「そうですか。色々と大変だったことは聞いています」
「…そうだな」
愛馬を小屋に連れて行き小屋に繋いだ父は、ダニエルとの会話を意図的に終わりにするように言葉を放ち、向きを変えて軍舎の方に歩き出した。
ここでエイダは父が帰ってきてから感じていた違和感に確信を持った。
まるで人が変わったような振る舞いをすると思っていたが、まさにそれだった。
人が変わっていたのだ。