皮肉と剣と、そして俺Ⅱ


言葉の端々からは棘が垣間見えるし、ダニエルを見る目は何の色もない。

それだけならまだいい。

父はエイダに視線さえも向けてくれなかったのだ。


これにはエイダも憤怒を通り越して、驚愕である。

以前なら笑顔の一つでも向けてくれるはずの父が、何も言わないで去っていった。

エイダたち兄妹にとってそれは天と地が反転するくらいに有り得ないことで、隣のダニエルも目を瞬くことしか出来ないようだった。



父に会って、母のことについて一言浴びせてやろうと思っていたエイダは拍子抜けし、怒りという感情をどこかに落としてしまった。


その時、エイダは父の苦しみを垣間見た気がした。




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