皮肉と剣と、そして俺Ⅱ
第四章~秘めた本心~
「おい、どうしたんだ」
はっとして前を見ると眉間に皺を深く刻んだ父がいた。
そこでエイダは自分が感傷に浸っていたことに気がついた。
「父様は母さんが嫌いでしたか?」
この質問がずるいと分かっていても、今はこうするのが一番早い。
父の胸の内を聞き出すには母の話を持ちかけるのが妥当なのだ。
訊いた瞬間、父は視線をさまよわせ唇を噛んだ。
これから何を言わんとしているのか、エイダには分かっている。
「嫌いなどではない」
暫くしてから返ってきた言葉。それは苦虫をかみつぶしたような物言いだった。
「では何故母の葬儀に来なかったのですか」
自分でも知らないうちに責めるような口調になっていた。
父への怒りはもう収まったはずなのに、どうやら心の奥ではまだ父を許せていない自分が居たようだ。