皮肉と剣と、そして俺Ⅱ
「何故です?」
もう一度問う。
だが父は何も言わない。望んだ答えも弁解もしない父が苛立たしい。
エイダが父の瞳を睨めつけるが怯んだ様子など微塵も見せず、父はそこにいる。
エイダはこの怒りを落ち着かせるためにひとつ深呼吸をした。
そして父を真正面から再び見据えると、突然父はシュークリームめがけて手を伸ばした。
このタイミングで手を伸ばした父をぎょっとして見つめている間に、父はシュークリームを口に含んだ。
「…マリーの味だ」
寂しそうに呟く父が痛々しかった。
美味しいとも不味いとも言わずに、ただただ口に運ぶ父を、エイダは見つめることしか出来なかった。