皮肉と剣と、そして俺Ⅱ


「俺はマリーを心から愛していた。いや、今でも愛している。
そして勿論、お前達も…だ」


小さく紡ぎ出された言葉は深くエイダの心を打つ。
目線で続きを促す。


「エイダからマリーの死を聞かされたとき、俺は足元が崩れ落ちるのを感じた。
そしてマリーの死に際に立ちあえなかった自分を呪った。
今すぐにでもマリーの元へと走っていきたい衝動に駆られた。
だが、俺はマリーの死のために一国を捨てる覚悟など持ち合わせていなかったのだ」


所詮俺なんてただの弱虫だ。
そう続けた父は苦しみに顔を歪めた。


「やっと本国に戻ってこられたのはマリーの葬儀が終わってからのこと。
俺は、お前達に合わせる顔が無かった。
そして何よりも、お前に…エイダに会いたくなかった」


この発言にはさすがのエイダも驚いた。
エイダは目を見開き、父の次の言葉を待った。


「エイダ、お前はマリーと俺、どちらに似ていると思う?」




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