皮肉と剣と、そして俺Ⅱ
静かな瞳と声で問われる。
「性格は父様。でも顔は、母さん」
答えると父は小さく笑顔を見せた。
けれどその笑顔は無理して作ったもの。
「そう。エイダは母さんの若い頃の容姿をそのまま写したようだ。
だから会いたくなかった。
…俺は少なからずマリーに負い目を感じていた。死を看取れず最後の晴れ舞台にも立ち会えず。
だからマリーの生き写しのようなエイダに会ったら、自分が壊れてしまうような気がした」
「だから、私と目も合わせてくれなかったのですね?」
「ああ」
そう言って父は俯いた。
こんな事って…。
これではただのすれ違いではないか。
お互いがお互いに負い目を感じていて、それ故に小さかった溝が深く暗くなっていく。
そんなこと耐えられない。
エイダは足に力を入れ、立ち上がった。
それに伴って顔を上げる父に、ひとつ言葉を落とす。
「着いてきて下さい」
言い捨て、エイダは後ろを振り向かずに歩き出した。