皮肉と剣と、そして俺Ⅱ


ナオトはゆっくりと立ち上がり、エイダが座っているソファまで移動する。
そして訳が分からないといった表情でナオトを見上げるエイダの腕を取り、自分の方に引き寄せた。


「えっ」


呟きと同時にナオトの腕にすっぽりと収まるエイダ。

もっと嫌がるかと思っていたが、思いの外大人しくてナオトは拍子抜けしたが、けれどこちらの方が都合が良いと再び口元をつり上げた。

エイダはと言うと、状況把握が出来ていないようで、ナオトの腕の中で「あ」とか「えっ」とかいう全く意味の無い音を漏らしているだけである。


だが、それだけで終わらせないのが久瀬ナオトという人間だ。

驚いているエイダに追い討ちをかけるように、更に言葉を重ねた。


「キス。してよ」




< 44 / 56 >

この作品をシェア

pagetop