皮肉と剣と、そして俺Ⅱ
《キス。してよ》
突然飛んできた言葉にエイダは目を剥いた。
弾かれたように顔を上げると、真剣な眼差しのナオトと視線が交差した。
あまりに近い距離にナオトの顔があったものだから、エイダの心臓は大きく跳ねた。
おそらく、鼓動がナオトに易々と伝わるくらいに。
「何でも良いんでしょ?なら、お礼にキスしてよ」
淡々と語られる言葉。
けれどそのどれもが真剣で、エイダは何も言う事が出来なかった。
普段のエイダなら、ナオトに一言皮肉を浴びせかけてこの場を回避するのに、何故か己が石像になったように動くことが出来ない。
何故?
そう問われても分からない。
ただ、嫌という感情が存在しないのは確かだった。