皮肉と剣と、そして俺Ⅱ


エイダが頭で一度にものを考えていると、不意に体温が去っていった。

ナオトがエイダを解放したのだ。


未だに視線を逸らさずにいると、一瞬だけナオトが苦渋の表情を見せたが、いつの間にか消し去られていた。

いつもの、おちゃらけたような、からかうような顔つきで言う。


「冗談だよ。本気にするなよ。
仕方ないからお礼は今のでいいよ」

「今?」

「そう、今。
抱きしめただろ?それでチャラにするって言ってんの」


そう言ってナオトは元のソファに座ってしまった。

エイダの心に釈然としないものを残しながら。






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