皮肉と剣と、そして俺Ⅱ


「シュークリームも。美味しかった」


ジャン将軍はそう言い残して去って行った。


去る時に、ナオトはジャン将軍と目が合った気がして慌てて会釈した。

が、何故か将軍はナオトの前で立ち止まった。


「きみがナオト君だね?」


エイダには絶対に聞こえない音量で将軍がナオトの名を読んだ。


頷いて肯定を示すと、将軍は腰を屈めてナオトにこう言った。


「エイダは一筋縄ではいかなかっただろう?
君も苦労するな」


ニヤリと形容するのに相応しい笑みを零してから、将軍は颯爽と歩いていった。


ナオトは去り行く背中を見ながら、これは一泡食らったなと口元をひきつらせた。

どうやら親子そろって一筋縄ではいかないようだ。


全てを見透かしたような将軍の背中に、ナオトは敬意を込めて一礼した。



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