ビターチョコレート
「だってどことなく俊ちゃんに似てるんやもん。」
あたしがそう言うと梢は一瞬表情を曇らせた後、すぐに真剣な顔つきをして言った。
「なぁ前から思ってたんやけど、やっぱり瑠美ってその俊ちゃんって人のこと好きなんちゃうん?」
梢は俊ちゃんのことを知っている。
小学生のときに俊ちゃんの話しはたまにしていたから。
「好きちゃうよ…。だって俊ちゃんとは幼なじみやもん…。」
あたしはそう言うと、何故だか胸の奥に痛みを感じた気がした。
「好きじゃなかったら、似てるって理由で選んだりしいひんと思うけどな。」
それだけ言うと梢は夏紀たちの会話に加わった。
梢にそう言われたあたしは何をするでもなく、ただ梢に言われたことが頭の中をグルグル回っていた。
確かにあたしは、俊ちゃんのことを思い出すと悲しくなったり胸が痛くなったりもしていた。
でもそれは、会えないからだと思い続けてきた。
だけど、『好き』っという言葉のほうがしっくりくる様な気がした。
そんなことを考えていると誰かに声を掛けられた。
「瑠美ちゃん!」
声のした方を見るとそれは、直樹君だった。