MAΖE〜メイズ〜
私の名前は倉橋 秀二
諒の父親であり,紫藤穣吏ちゃんを誘拐し,殺そうとした張本人である。
私は紫藤グループで働くただの一社員に過ぎなかった。
社長の紫藤晶とも直接面識があったわけでもなく,会話したことも一緒に仕事をしたことすらない。
そもそも彼は私の存在すら知らないかもしれない。
そう思っていた。
だが,彼は突然私の元に現れた。
日付が変わり
7月15日の深夜
彼はボディーガードも付けず,たった一人で私のアパートまでやってきたのだ。
「しゃ,社長!どうされたんですか!?」
「君に頼みがあってね」
紫藤は奥さんを殺した直後だと思えないくらい冷静だった。
そして私はそこで彼から奥さんを殺したことや,娘さんを眠らせて監禁していることを聞かされた。
本当に鳥肌が立った
「私はこれからも紫藤グループを支えていかなければならない存在だ。こんなところで警察に捕まるわけないはいかない。だから君に全ての罪をかぶってもらいたいのだよ」
「そんな…いくら社長の頼みでも犯罪は…」
「そうか残念だ。なら君には今ここで死んでもらおう」
紫藤は拳銃を私に向けた
「や,やめてくれ…」
「なら私の頼みを聞いてくれるね?大丈夫,君は警察に捕まったりしないよ。娘を殺してくれたあと,すぐに国外へ逃げられるように準備しておくし,報酬もそれなりの額は払うつもりだ。頼んだぞ」
「………」