MAΖE〜メイズ〜
紫藤は仕事が忙しいため,学校行事には一度も来てはくれなかったが,家にいるときはよくあたしと遊んでくれた。
今まで高くて手の届かなかったテレビゲームを買ってもらったときは,嬉しくて1日中跳び跳ねていた。
物を与えるだけでなく,彼はちゃんと一緒にゲームをしてくれた。
ただ,やっぱりすぐには「お父さん」と呼ぶことができなかった。
ようやく呼べるようになったのは,一緒に住み始めてから数ヶ月経ってからだった。
それに合わせて,紫藤もあたしを「譲吏」と呼び捨てで呼ぶようになり,少しずつ家族らしくなっていった。
いや
今思えば
これは家族ごっこに過ぎなかったのかもしれない…