MAΖE〜メイズ〜
午後3時ジャスト
たくさんのフラッシュを浴びながら紫藤は現れた。
黒のスーツに身を包んだ紫藤はうつむいたまま,ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
はたから見れば,妻子を失った可哀想な男…
そんな風に見えるのが許せなかった。
「紫藤社長,今回の事件について何か犯人に言いたいことはありますか?」
一人の記者の質問から,記者会見は始まった。
『犯人に対しては憎い気持ちでいっぱいです。最愛の妻…そして幼い娘の命を奪われ,悔やんでも悔やみきれません』
「まだ穣吏ちゃんの遺体が発見されていませんが…今はどういう心境ですか?」
『もちろん早く見つけてほしいです。暗い海で一人で眠っている穣吏が可哀想で仕方ありません…』
「なぜ今になって会見を開こうと思ったのですか?」
『ずっと前から会見の話は出ていたんです。しかし,私のワガママで延期してもらってたんです。つい先日まで人前に立てるような状態ではなかったので…』