□■1曲のラブソング■□




『ぁっ…待って、じゃぁメアドぐらい交換し…』




『調子に乗るな。また投げるぞ。』





亜子が南斗を睨みつける。


彼女の見とれるほどの綺麗な目に、南斗は思わずたじたじ…



『ごっ、ごめん。』



さっきの背中に走った激痛を思い出して、思わず引き下がる南斗。



『じゃぁ、せめて、次に会う約束、とか……』




南斗は必死で頼み込む、が、亜子は鞄を手に取って立ち上がり、





『いくら恩人とは言え、冗談が過ぎると警察を呼ぶぞ。


あたしはもう帰る。じゃぁな。』





亜子はドアの前で振り返りもせずに、足早に南斗のマンションを出て行った。




『………ちょっとまてよ、あの子…』




外の道路で、カツカツとヒールの音が聞こえていた。


多分亜子のものだろう。



が、間もなくピタリと止まった。




『…帰り道わかってんのかなぁ…?』




南斗の予感は的中し、足音の主が南斗の部屋のドアを勢いよく開けた。




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