天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「ば、馬鹿な!オウパーツが、この学園に…情報倶楽部の部室の下にあっただと!?」

高坂は思わず声を荒げた後、絶句した。

「恐らくは…この報告書を書いた黒谷麗華こそが、先程の鉄仮面の女」

舞はため息をつくと、再びキーボードに指を走らせた、生徒に関するデータベースにハッキングした。

「二年間…休学扱いになっていましたが、今戻ってきたのでしょう」

「オウパーツを被ってか…」

そこまで言ってから、高坂ははっとした。

「ま、まさか!森田部長が、オウパーツを身につけて、自らを犠牲にしたのも!」

「それは、わかりません。大月学園にあったオウパーツは、一つ。森田部長のやつはわかりません」

舞は、画面を報告書に戻した。

この報告書を書いた当時、麗華は極楽島にオウパーツがあることを知らなかった。

「…」

高坂は、麗華の報告書を見つめながら、拳を握り締めた。

その頃の彼女が書いた内容は、オウパーツを人類の盾にできるのではないかと書かれていた。

しかし、彼女はオウパーツの魔力に負けた。

そして、今の彼女がいるのだ。

鉄仮面に、顔を奪われた…異形な姿を。

「…」

部室から出て、体育館裏を歩く麗華の前に、熊のような体型をした男が、現れた。

「麗華」

その男もまた、オウパーツの適合者の1人だった。

「ベアハング…」

麗華は目を細めた。

「やはり…ジェースが生きていたぞ」

ベアハングの衝撃的な報告にも、麗華は驚かなかった。

「そう」

それだけ言うと、再び歩き出そうとする麗華の道を塞いでいたベアハングは、体を横に向けた。

「それだけか?」

ベアハングは意外そうに、麗華の動きを目で追った。

「当たり前のことよ」

麗華はクスッと笑い、

「もともと一つだったオウパーツは、引き合う。宿主が生きていても、死んでいてもね」

まっすぐに歩き出した。

「…」

ベアハングは目を細めると、遠ざかっていく麗華の後ろ姿をじっと見つめた。

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