天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「どうした?ジェース」

理事長室の扉を見つめたまま動かないジェースに、ティフィンが声をかけた。

「いや…何でもない」

ジェースは首を横に振った後、扉を叩いた。





「オウパーツ…」

部室から出た高坂は、体育館裏を歩きながら、考え込んでいた。

「まったく…いろんな問題が起こるわねえ」

そんな高坂の前に、さやかが姿を見せた。こちらも、腕を組んで。

「さやか…」

高坂は少し驚き、足を止めた。

「今、オウパーツはつけているのは、転校生の4人に…生徒会長」

「いや…転校生は3人だ。1人は、復学扱いになる」

高坂の言葉に、さやかは口を閉じた。

「さやか…」

高坂は、さやかをじっと見つめ、

「お前は知っていたな。俺が入る前の情報倶楽部に、森田部長以外に、部員がいたことを」

強い口調で訊いた。

さやかは組んでいた腕を解くと、肩をすくめて見せた。

「詳しくは知らなかったわ」

「勿論…オウパーツのことも、最初から」

「真!」

「なぜならば、二年前!最初に極楽島に部長が向かったことを、俺に教えたのは、お前だから」

「そ、それは!」

口ごもりながらも、何とか言葉を絞り出そうとするさやかを見て、高坂は歩き出しながら、言った。

「言い訳はいい。だが、部長が守ったものを、俺の代で好きにはさせない!」

「真!」

振り返り、後を追おうとしたが…少し躊躇ってしまった。その動きが、高坂とさやかの間に、一瞬で距離を開けた。

「ああ…」

手を伸ばしながら、頭を垂れるさやか。

そんな様子を、木陰に隠れて見ている者がいた。

幾多流である。

「フン」

軽く鼻を鳴らした後、幾多は落ち込んでいるさやかに気付かれないないように、足音を立てずに体育館の奥へ歩いて行った。

「相変わらずだな。真は…」

そう言った後、幾多はクククッと含み笑いをもらした。

「お前らしいよ。世界が変わっても、お前は変わらない。その本質のブレのなさは、感心するよ」
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