天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「九鬼さん!」

すべての授業が終わり、生徒会室に向かう九鬼の後ろから、誰かが駆け寄って来た。

「エルさん…」

振り返った九鬼の目に映ったのは、ジャスティンとともに極楽島で出会ったエルという少女だった。

彼女は、すぐに旅に出たジャスティンとは違い、大月学園の生徒になったのだ。

「私も生徒会にお邪魔していいですか?」

エルは九鬼の横に来ると、笑顔で訊いた。

右足のオウパーツを身につけた九鬼をサポートする理由もあるらしいが、エルはできるかぎり九鬼のそばにいようとしていた。

「ええ…」

九鬼は曖昧に、頷いた。

オウパーツをつけた4人組が学園にいる為、できれば自分のそばにいて欲しくはなかった。

しかし、無下に断ることもできなかった。

極楽島での戦いで、傷付いた九鬼の足を治療し続けてくれたのは、エルだったからだ。

「私も生徒会の為に、何かお手伝いすることありますか?」

笑顔でそう言うエルに、九鬼は愛想笑いを浮かべ、ありがとうとしか言えなかった。

「ケケケ」

その時、どこからか下品な笑い声が聞こえて来た。

九鬼はその声に、聞き覚えがあった。

「エルさん!」

九鬼は前に出て、エルを背中で庇うと、声が聞こえて来た方向を睨んだ。

十メートル程先に、ソリッドが立っていた。

「生憎、俺は!慎重派なんだよ。ジェースとやり合うよりも、先に初心者を殺る方が確実だろ?」

ソリッドは舌を出し、唇を舐めた。

「九鬼さん!」

自分の背中にしがみつくエルに、九鬼はソリッドを睨み付けながら言った。

「エルさん!後ろに下がって下さい!あいつの相手は、あたしがします」

「わ、わかりました」

九鬼の全身から漂ってきた闘気のようなものを、敏感に感じ取ったエルは背中から離れた。

「麗華よ!俺は貴様の思い通りにはならない!すべてのオウパーツを手にするのは、このソリッド様よ!」

と叫ぶと同時に、左足で床を蹴り、九鬼に飛びかかってきた。

(右足!)

蹴り足を冷静に判断した九鬼は、ソリッドの攻撃を左手で受けようとした。

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