天空のエトランゼ〜赤の王編〜
叫びながら、九鬼に向かっていくソリッド。

「九鬼さん!」

その向こうで、エルが叫んだ。

「こいつは、2つのオウパーツの発動するタイミングをずらそうとしています!」

「一般人が、なぜそれを!」

ソリッドは舌打ちした。

「だけど、そう簡単にできるはずがありません!オウパーツはもともと一つの物体なのですから!」

「黙れ!小娘!」

ソリッドの左足が鞭のようにしなり、九鬼の顔を狙う。

しかし、当たらない。

「これなら、どうだ!」

左足の軌道が、変わる。まるで、無数の足があるかのように、九鬼の目には映った。

しかし、九鬼は目で判断しない。

「何!?」

蹴りを繰り出しながら、ソリッドは驚いた。

なぜならば、九鬼が目を瞑っていたからだ。

「は!」

そして、気合いを入れると、右足を蹴り上げた。

「!?」

ソリッドの蹴る方向に合わせた九鬼の右足は、そのまま床にソリッドの左足を押さえつける格好になった。

「は!」

ソリッドの足を封じた後、九鬼の手刀が首筋に叩き込まれようとした瞬間、ソリッドはにやりと笑った。

「死ね!」

胸のオウパーツだけを発動させようとしたソリッドの笑いは、凍り付いた。

手刀は囮だったのだ。

押さえつけていた右足を素早く離すと、そのまま膝を曲げて、ソリッドの腹に突き刺していた。

くの字に体を曲げたソリッドに、別々にオウパーツを発動させる芸当などできなかった。

九鬼は、くの字に曲がったソリッドの首に手を渡すと、絞めながら持ち上げ、背中から廊下に落とした。

「うぎゃああ!」

オウパーツをつけていた為に、肉体は大したダメージを受けていないが、ソリッドの精神的ダメージは大きかった。

「貴様!何者だ!」

ソリッドは直ぐ様起き上がると、九鬼を睨んだ。

「これ程の体技!どこかで、訓練を受けたのか!」

「…」

ソリッドの質問に、九鬼は答えず…ただ、右手を突きだし、指でかかって来いと示した。

「な、な、舐めるな!」

その仕草を見た瞬間、ソリッドはキレた。
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