天空のエトランゼ〜赤の王編〜
オウパーツをつけていない素肌の部分から、髪型のように鋭い刺が飛び出し、体の皮膚感がワックスを塗ったかのように、つるつるになっていく。

「まさか!ジェース以外で、この姿になることがあるとはな!」

ソリッドのにやけた口元が、裂けていく。

九鬼は、目の前の変幻の感覚を知っていた。

「魔獣因子…」

九鬼の呟きに、エルが反応した。

「!」

ぎゅっと胸を握りしめて、後ろからソリッドの変化を見つめていた。

「死ね!」

全身の刺が、九鬼に向かって放たれた瞬間、

「装着!」

九鬼の姿が、再び消えた。

「な!」

誰もいなくなった空間を、虚しく通り過ぎた刺を唖然と見つめていたソリッドは、真横から凄まじい衝撃を受けて、ふっ飛んだ。

窓ガラスを突き破り、外に出たソリッドの目に、廊下で右足を突きだしている乙女ブラックの姿が目に入った。

「あれが…月の鎧?」

立ち上がったソリッドが、乙女ブラックの方を向いた瞬間、上空に無数の回転する光のリングが現れた。

そして、一斉にソリッドに襲いかかった。

「馬鹿目!こんな攻撃が通用するか!」

ソリッドの胸と左足から、振動波が発生し、向かってくる光の輪を次々に破壊した。

リングは光の粒子に戻る瞬間、一瞬だけ輝いた。

「ハハハ!効くかよ!」

その輝きは、目眩ましの役割を担っていた。

「うん?」

ソリッドは、リングの輝きが消えた時、廊下に九鬼がいないことに気付いた。

しかし、もう遅かった。

ソリッドの頭に、上空から落ちてきた九鬼の右足が、突き刺さっていた。

「な、なにぃ!」

咄嗟に、オウパーツを発動させて相殺しょうとしたが、ムーンエナジーが絡まった九鬼のオウパーツと共鳴できなかった。

「ま、まさか…」

ソリッドは、脳天から塵になっていく。

「貴様も…オウパーツの振動を変えられるのか…」

それが、ソリッドの最後の言葉になった。

胸と左足のオウパーツを残して、ソリッドはこの世から消滅した。

「月影キック…」

呟くように、地面に着地した九鬼のそばで2つのオウパーツが転がった。
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