天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「どういう意味だ?」

まるで戦意を失ったようなジェースを見て、玲奈は眉を寄せた。

「自由になりたければ、このままどこかにいけばいい。もう組織はない。オウパーツを集めることも辞めた方がいい。お前は、女の子なのだから…」

ジェースがそう言った瞬間、玲奈は一気に間合いを詰めて来た。

「そんなお前の言い方が、気にいらないんだよ!」

「!?」

ジェースは下げた右腕で、玲奈の左拳を受け止めた。

2つのオウパーツの間に、火花が走る。

「玲奈…」

意外そうな顔をするジェースを見て、玲奈は唇を噛み締めた。

「女だからと言って、そんな扱いを受けて!喜ぶと思っているのか!」

ジリジリとジェースが押され、弾かれた。

バランスを崩すと、ジェースは転けそうになりながらも、すぐに体勢を立て直した。

「さすがね。後ろに転けるのは慣れているみたいね」

玲奈は、クスッと笑った。

反射的に、再びサイレンスを向けてしまったジェースは、息を飲んだ。

「ジェース…。あたし達は、組織によって育てられた。そして、お互いにオウパーツを身につけている」

「チッ」

ジェースの目に、玲奈のオウパーツの輝きが飛び込んで来た。

「あたしに、優しさはいらない。ほしいのは」

玲奈は左手の人差し指で、ジェースの右腕を指差し、

「あんたのオウパーツよ」

冷たい視線を浴びせた。

「玲奈」

「ジェース。あんたのオウパーツを奪った時、あたしの今までの人生は終わる」

と言った瞬間、玲奈の姿が消えた。

ジェースは見失うと同時に、銃口を後ろに向けて、一発撃った。

「ぎゃああああ!」

女の金切りのような銃声が、空き地に響いた。

「ジェース…」

真後ろに現れた玲奈の左腕から、硝煙が上がる。しかし、硝煙の向こうで、ジェースを見る玲奈の目が、鋭い。

「ディアンジェロに言われたんじゃないの?」

「!?」

振り返ったジェースの目に、映る玲奈の姿が、ディアンジェロと重なる。

「撃つときは、魂を込めろ!」
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