天空のエトランゼ〜赤の王編〜
その言葉を聞いた瞬間、ジェースの体が固まった。

「フン!」

玲奈の蹴りが、ジェースの脇腹に突き刺さった。

「ジェース!」

吹っ飛んだジェースのもとに、空き地の入口から動けずにいたティフィンが、飛んできた。

「邪魔するな!」

そんなティフィンに気付き、玲奈のオウパーツが振動した。

「塵になりたくなければな」

オウパーツの振動波よりも、玲奈の全身から醸し出す殺気に、ティフィンは息を飲んだ。

「どけ!ティフィン!」

ジェースは左手で、ティフィンをどけると、立ち上がった。

「ジェース!大丈夫なのか!」

ティフィンは離れながら、訊いた。

「心配するな。大丈夫だ」

ジェースは、サイレンスを上着の内側にしまうと、玲奈を見つめ、

「玲奈…。俺は、お前にはすべてのオウパーツを身につける資格があると思っていた。魔王に捧げるなんて、馬鹿げた目的を知らない頃はな!」

右腕のオウパーツを発動させた。

「組織にいた仲間達の殆どは、死んだ。生き残ったのは、オウパーツを身につけられた者だけだ」

「何が言いたい?そんな当たり前のことを言って!」

玲奈の姿が消えた。

しかし、今度はジェースも消えた。

「は!」

「は!」

2つの気合いが、見えない空間で炸裂した。

「きゃあ!」

「うわあっ!」

2つのオウパーツは、共鳴することなく、反発した。

互いに後ろに吹っ飛びながらも、2人は体勢を崩すことはない。

「は!」

「は!」

再び地面を蹴ると、2人はぶつかり合った。



そんな戦いの様子を、ティフィン以外に見守っている人物がいた。

灰色のコートで全身を包み、目深のフートが表情を隠した男。

男は気配を断ち、遠くから戦いを見守りながら、呟くように言った。

「真剣にやり合ったならば、ジェースが勝つだろう。しかし、お前は…玲奈に本気になれない。そして、玲奈は…お前だからこそ、持てる以上の力を発揮できる」

男は息を吐くと、2人に背を向けた。

「第二の試練だ。ここをどう切り抜けるかで…お前の生き方が決まる」

男はそのまま…姿を消した。
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