天空のエトランゼ〜赤の王編〜
蹴りを放ったのは、九鬼だった。しかし、足の感触から、まったくダメージを受けていないことがわかった九鬼は、女から離れた。

女を挟んで、正面にジェース。後ろに九鬼。

2人は同時に、目を見開いていた。

「アハハハハ!」

笑い続ける女の全身が、オウパーツに包まれていく。

「すべてのオウパーツを集めなくても!4つもオウパーツがあれば、全身を包むことは可能!」

メタリックなボティは、いつのまにか始まっていた黄昏時のオレンジの輝きに、乱反射した。

「クッ!」

ジェースはサイレンスの弾がなくなったことに気付き、弾丸を込めた。

その様子を目を細めながら、女は言った。

「無駄を詰めるな!この体に、銃弾は効かぬわ!」

「まだわからないぜ」

ジェースは、サイレンスを女に向けた。

「やはり…エルさんなの?」

女の声を聞き、九鬼は確信した。

「エル?」

九鬼の言葉に、女は振り返り、クククと笑った後、

「我は、王よ!そんな名前ではない!だが、しかし!この体は素晴らしい!」

突然、女の体の大きさが倍になった。

「王の体の資格がある!」

にやりと笑うと、女は一瞬で九鬼の目の前まで移動した。

「!?」

さすがの九鬼も避ける間がなかった。

赤ん坊の頭くらいの大きさになった女の拳が、九鬼の顔にヒットする寸前、黒の乙女ケースが盾となった。

「!?」

オウパーツの攻撃を受け止めた黒の乙女ケースの表面に、無数のヒビが走った。

それを見ても、九鬼は動じることなく叫んだ。

「装着!」

割れたのは、表面だけだった。中から現れたのは、銀色に輝く乙女ケース。そして、ケースが開くとさらに目映い光が放たれ、九鬼を包んだ。

その光を切り裂いて、銀色の戦士が姿を見せた。

「乙女シルバー!推参」

「乙女…シルバー!?」

ジェースは、女越しに九鬼の姿を見つめた。

「月の鎧か!大した防御力もない癖!」

至近距離で、何度も殴りかかる女の拳を九鬼は余裕で避ける。
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