天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「わたしは…生まれたかっただけなのに…」

刹那達の瞳に、涙が流れた。

その瞬間、

「ああ…」

小さく頷いた九鬼は、



肉片を握り潰した。

拳の隙間から、血や肉の欠片が飛び散る。


「…」

その様子を見ても無言でしたが、思い切り目を見開いた刹那達は、

次の瞬間、

断末魔の声を上げた。

「ぎゃあああ!」

九鬼を囲む刹那達が、消えていく。


九鬼は目を瞑ると、拳の中に残った肉片を投げ捨てた。

顔をしかめながら、その場から去ろうとした九鬼は、足を止めた。

いや、止めたのではない。

足が動かなくなったのだ。

「何!?」

異様なプレッシャーが、九鬼の全身にかかっていた。

乙女シルバーになっていなければ、圧力で押し潰されたであろう。

しかし、九鬼は全身に気合いを入れると、プレッシャーをはね除け、後ろに向かって構えた。

しかし、プレッシャーのもとがいない。

「チッ」

舌打ちすると、九鬼の体が消えた。

後ろに現れた者の後ろに、高速で移動すると、回し蹴りを叩き込んだ。

「無駄よ」

脇腹にヒットした蹴りは、相手の体をすり抜けた。

「!」

まったく当たった感触がなく、空を切ったような感覚に、九鬼は唖然としながらも、四方に気を飛ばした。

「無駄よ」

蹴りがすり抜けた相手が、振り返った。

その顔は、刹那そのものだった。

刹那はにこっと笑い、

「あなたが、考えているような…残像ではないわ」

体を九鬼に向けた。

「あたしの体は、この空間にはないから」


「どういう意味だ!」

九鬼は正拳突きを、刹那の額に叩き込んだ。

しかし、拳は額を貫通した。

「言ったじゃない」

刹那は笑いながら、刹那の腕を取った。

「ここには、いないと」


「クッ」

掴まれた腕に、激痛が走る。

腕から感じる痛みが、確かに握られていると告げていた。
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