天空のエトランゼ〜赤の王編〜
地上から遥か上空…。

雲の中を、ジェット機よりも速く飛び回る影が…数え切れない程飛び回っていた。

その中でも、一際速く…ジグザクの軌道を描く影があった。

「うぎゃああ!」

叫び声を上げて、影の一つが雲の中から落下した。

「スピードでは敵わん!周りを囲め!」

ジグザクに飛び回る影を追いかけるではなく、追い込むことに変えた無数の影達。

その動きを見て、ジグザクに動いていた影は雲の中で、動きを止めた。

「今だ!一斉にかかれ!」

無数の影は、止まった影に向かって、上下左右…あらゆる方向から襲い掛かる。

「フッ」

止まった影は、口元を緩めた。

次の瞬間、白き雲は…雷雲に変わった。

「うぎゃああ!」

晴天の空に、その雲からだけ雷が発生した。

そして、襲い掛かってきたすべての影に絡み付いた。

「そうか…」

雷雲が元に戻った時…無数の影が落ちて行った。

それは、黒焦げになった魔物達だった。

「スピードの問題ではない…。最初から…空で戦ってはいけなかったのだ」

黒焦げになった魔物の一匹が、移動する雲の中から姿を現した者に、目を細め、

「なぜならば…空は、あの方のものだからだ」

笑った。

透き通った白い肌に、巨大な純白の翼。そして…見る者を魅了するブロンドの髪。

「天空の女神よ!」

魔物はそう叫んだ瞬間、灰になった。

落下していくすべての魔物が、途中で灰になった。

「赤星…」

空中に浮かびながら、アルテミアは僕に話しかけた。

「何?」

僕が聞き返すと、再びアルテミアは笑い、

「行くぞ」

ただそれだけ言うと、再び翼を広げた。

「うん」

僕はただ…頷いた。

どこへでも、行くつもりだった。

アルテミアと一緒ならば…。
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